メッセージ

現在、従業員数50名未満の小規模事業場で働く人は、日本の労働者の大きな割合を占めています。しかし、小規模事業場で働く労働者のストレスや心の健康(メンタルヘルス)への対策は十分に進んでおらず、一部の研究では小規模事業場で働く労働者の約半数にうつ症状がみられたと報告されています。過労死事例の半数以上は小規模事業場で発生しており、過重労働やそれにともなう心の健康障害も喫緊の課題となっています。

小規模事業場で働く人がストレスやメンタルヘルスについて知り、仕事の悩みやストレスに自分自身で対処できるための仕組みを早急に普及・浸透させる必要があります。Webを利用した心理教育は、受動的なものであっても精神健康の改善に効果があることが過去の研究からもわかっています。今回のプロジェクトでは、Webツールを利用して多くの方に使っていただきやすいプログラムを開発しています。

本プロジェクトでは、研究者だけでなく、実際の小規模事業場の経営者や、小規模事業場を担当している社会保険労務士、産業医など、実情に詳しい方々にご参画いただき、一緒にプログラムの作成および普及と実装に向けて活動を進めています。実際の社会に根付くプログラムとするためには、研究者の力だけではなしえません。多くの方からの現実的なご意見を反映し、「こころのセルフメンテ うぇるびの森」が完成しました。このサイトが、小規模事業場で働く方々に役立つセルフケアとなり、またそれが多くの労働者の手元に届くことを願っています。

研究代表者
今村幸太郎
東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野・特任講師